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2023.06.02
世界中でキャッシュレス決済の使用が増えています。特に日本では、2019年から2020年にかけて政府が推進した「キャッシュレス・ポイント還元事業」の影響で、その動きはさらに加速しています。経済産業省によると、2022年度のキャッシュレス決済比率は36.0%(111兆円)となりました。このような状況を受けて、まさに、中小企業でもキャッシュレス決済の導入を検討するべき時期が来ていると言えます。
◆我が国のキャッシュレス決済額及び比率の推移(2022年)
出展:経済産業省「我が国のキャッシュレス決済額及び比率の推移(2022年)」
キャッシュレス決済の導入には、企業側・顧客側双方に多くのメリットがあります。
1つ目は、管理の手間が大幅に削減されることです。現金を取り扱うということは、その保管、運搬、計算といった手間を伴います。現金がなくなれば、それらの手間は必然的に削減され、経営者やスタッフの時間を他の重要な業務に振り向けることが可能になります。
2つ目は、売上の向上が期待できることです。キャッシュレス決済は、顧客にとって支払いをスムーズに行う手段であり、また、特定のキャッシュレス決済を使用することでポイントが付与されるため、消費を促進します。これはすなわち売上向上に直結します。さらに、顧客の購入データが蓄積されることで、マーケティング活動に生かすことも可能になります。
3つ目は、現金にまつわるリスクを軽減できることです。現金は盗難や紛失のリスクをはらんでいます。それに対し、キャッシュレス決済はそれらのリスクを大幅に軽減します。また、偽札の取り扱いリスクもなくなるため、安心してビジネスを運営することができます。
最後に、社会的なトレンドに合わせることも大切な要素となります。近年、キャッシュレス化が進む中で、その流れに逆行することは企業イメージにも影響を及ぼす可能性があります。顧客からの信頼を維持し、新たな顧客を取り込むためにも、キャッシュレス決済の導入は避けて通れない選択と言えるでしょう。
「キャッシュレス決済を導入する」と決めても、その方法は一つではありません。デビットカード、クレジットカード、QRコード、モバイルウォレット、オンライン決済など、選択肢は多岐にわたります。どれを選ぶべきかは、それぞれの特性と自社のビジネスモデルや顧客のニーズによります。
まず、ビジネスの規模と種類を考慮してください。例えば、主にオンラインで販売を行う中小企業は、オンライン決済サービスを導入することが適しているでしょう。一方、店頭での小売業を主に行っている企業には、QRコードやモバイルウォレットなどの決済手段が適しているかもしれません。
次に、顧客の属性も重要です。若い世代の顧客が多いなら、スマホ決済が一般的であることから、モバイルウォレットやQRコード決済の導入が考えられます。逆に、高齢の顧客が多い場合、まだ現金を主に使用している可能性がありますので、クレジットカード決済の導入が無難でしょう。
また、コスト面も無視できません。キャッシュレス決済を導入するときには、手数料や初期費用、維持費などが発生します。それらのコストがビジネスの収益を上回るかどうかは重要な問いです。そのため、導入を検討する際には、各決済サービスの費用対効果をしっかりと比較検討することが大切です。
さらに、決済の利便性だけでなく、セキュリティ面も重要です。クレジットカード情報の不正利用などの事件が起こると、企業の信頼は一瞬にして失われます。そのため、どの決済サービスを選ぶにせよ、そのセキュリティ体制が万全であることを確認する必要があります。
以上の要素を総合的に考慮し、自社のニーズに最も適したキャッシュレス決済を選びましょう。そして、常に市場の動向を見つつ、柔軟に対応していくことが求められます。
キャッシュレス社会はもはや避けて通れない流れとなっています。顧客ニーズの変化に対応するため、そして効率的な経営を行うためにも、中小企業でもキャッシュレス決済の導入を真剣に検討すべきです。導入に際しては、自社の業態や顧客のニーズを考慮し、利用可能な支援策を最大限活用することが求められます。今こそ、中小企業にとってキャッシュレス決済の導入は、次の成長のステージへのステップとなるでしょう。
今回のコラムでは、中小企業がキャッシュレス決済を導入するメリットや、具体的な導入ステップについて解説してきました。しかし、これらを踏まえた上で、最終的な判断はあくまで各企業の経営者様自身が行うべきものです。経済状況、業態、顧客層など、企業の状況は千差万別。一概に全ての企業がキャッシュレス決済を導入すべきとは言えませんが、少なくともその可能性を真剣に考慮し、現代の消費者ニーズとビジネス環境の変化に対応するための一つの選択肢として、キャッシュレス決済の導入を検討することは重要でしょう。
キャッシュレス決済の導入に際しては、初期コストや手数料などの面でも細心の注意が必要です。適切なパートナーを見つけ、システムの安定性や手数料、サポート体制などを総合的に評価することが求められます。また、スタッフ教育も欠かせません。新しい決済システムを顧客にスムーズに利用してもらうためには、スタッフがその操作方法をしっかりと理解し、必要に応じて顧客に説明できる必要があります。
しかし、それらの努力を経た結果、企業は顧客満足度の向上、売上の増加、経営効率化などの大きなメリットを享受できるでしょう。また、その先には、新たなビジネスチャンスが待っているかもしれません。例えば、オンラインとリアル店舗の結びつきを強めるO2O(Online to Offline)戦略の推進、AIを活用した顧客行動分析によるマーケティングの最適化など、キャッシュレス化が可能にする未来は大変広大です。
今後の経済のデジタル化が進む中で、キャッシュレス化はその中心的な要素の一つとなることでしょう。
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